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HONDA CB-1

現在の愛車 CB-1
ピカピカの新車の頃の雄姿

大学卒業後、最初に入社したのはホンダのディーラーでした。もちろん四輪のです。今は亡きシティやアコード、レジェンドやインスパイア、ついでにコンチェルト(かなりマイナー)などを売っていました。まあ僕がディーラーで働いていたのはそんな頃です。

四輪のディーラーとは言え、ホンダ製品が発表になると四輪、二輪、農機具から発電機に至るまで、ニュースが届きます。そんなニュースの中に、気になる一台がありました。その写真は、アメリカで発表されたあるバイクでした。それがとりあえず現在の愛車、CB-1です。アメリカで発表されたCB-1は、ソリッドのブルーのタンクに、'CB-1 HONDA' のロゴ、つや消し黒のマフラー。これがすごくカッコよくて、まさに一目惚れでした。 ところが、1989年に日本で発表されたCB-1は、ソリッドの赤、メタリックブルー(紺)、ソリッドブラックの3色でした。

「えっ、あの青はないの?」僕の第一声です。

マフラーもつや消し黒ではなく、バフ仕上げでピカピカのステンレス製でした。

しかし、一目惚れしたことには変わりありません。CB-1には僕の理想がほぼ具現化されていました。僕の理想は、「バイクは風を受けて走るもの。カウルなんて要らない」「ライトはハンドルと一緒に動かないとイヤだ。しかも当然丸目」「水冷エンジンに飾りのフィンなんて要らない。水冷エンジンはシンプルな外観が一番」「それでもレーサーレプリカに置いてきぼりにされるのもイヤなので、走りの部分(エンジン、足回り)はそれなりの性能が欲しい」「センタースタンドがあると便利だ」と、まあわがままいっぱいなのですが、CB-1はその全てを満たしてくれています。

ホンダを辞める直前ですから、購入したのは1990年だと思います。前後サスの見直しがされた90モデルです。水冷DOHC16バルブエンジンの最高出力はCBRの3馬力減の57ps。まあ3馬力は腕で十分カバーできます。なによりそのエンジンは余計なフィンなど一切ないシンプルそのもの。潔い!実に潔いエンジンです。ピカピカの丸目のライトはちゃんとハンドルと一緒に動きます。センタースタンドも装備。ばっちりです。ちなみに僕の愛車は紺です。やはり青系がよかったので。

乗った感じは、「手が痺れない!」が第一印象です。それまでシングルエンジンのCBX250RSが愛車でしたから、当然ですが、マルチエンジンは実にスムーズです。慣らしと称して夜な夜な高速を走りました。CBX250RSの倍近いパワーです。高速も快適そのものです。もともとカウルに頼ったことなどありませんでしたから、カウルがないからと言って全く問題ありません。とにかく毎晩のように高速を走り、あっという間に慣らしを終えました。

CB-1の欠点と言うか、弱点と感じたのは、ラジエーター位です。真夏にはすぐにファンが回り始め、太腿が熱風に晒されます。逆に真冬には過冷却過ぎるのか、水温がほとんど上がりません。ラジエーターの三分の一位をガムテープで覆って走っていました。一般的に弱点と言われているタンク容量ですが、日本においては、どんな田舎にでもガソリンスタンドはありますから、個人的には弱点とは思いませんでしたね。給油間隔の短さは、別に苦とも思いませんでした。

僕はなぜか会津若松が好きで、10年位前までは毎年ゴールデンウィークかお盆休みのどちらかには必ずツーリングで訪れていました。途中林道に近い道がありましたが、適度に緩いCB-1のポジションのおかげで、不安なく通過できました。CB-1とは長崎まで一緒に旅したこともあります。長崎に入ってすぐ、休憩した時に、それまでの疲れからか(途中3泊位していました)CB-1では唯一の立ちゴケをしてしまいました。400ccクラスでは軽めのCB-1でしたが、その時ばかりは起こすのが辛かったことを覚えています(ツーリングの荷物もあったので、若干重かったとはいえ、情けない)。

さて、CB-1を語るとき、避けては通れないものがあります。それは、所謂ネイキッドブームです。

CB-1とほぼ同時期に、もう二台のネイキッドモデルが世に送り出されました。一台は、その名もカワサキゼファー。僕に言わせれば単なる懐古趣味の古臭いバイク(あくまで個人的な見解ですので、悪しからず)。そしてもう一台は、スズキバンディッド。こちらはCB-1と構成はよく似ているものの、そこにイタリアンテイストがちりばめられ、華がありました。僕はCB-1とのファーストインパクトがあまりにも印象深かったため、他には全く目移りしませんでしたが、フタを開けてみればゼファーの一人勝ち。そのスタイリングからバンディッドも善戦しましたが、CB-1はバイク便のバイクとして以外はあまり売れなかったようです。もっともそれらの事実は僕がCB-1に乗り続けることに全く影響を与えませんでしたが。

ホンダはテコ入れのため、CB-1 Type2というのを出しました。これはハンドルをセミアップに変更し、タンク容量を若干増やし(11リットルから13リットルへ)、その他小変更して、拡販を狙ったのでしょうが、57psから53psへのパワーダウンが嫌われたのか、ほとんど見かけたことはありません。

バイク屋をしている友人が「エンジンがいいんだから、普通の形で出せばよかったのに・・・」と言っていましたが、まるで予言が的中した気がします。CB-1の後を受け登場したCB400Super Fourはその後爆発的な人気を博しているので。でも、CB-1のサイドカバーにも小さく書かれているんですよ。'CB400Four'って。

この頃のネイキッドモデルには面白いモデルがたくさんありました。同じホンダには水冷Vツインに片持ちサスのブロス。ヤマハにはこだわりの2スト250のR1-Zと異色モデルSDR。そしてスズキ、カワサキは先の通り。僕が一番バイクを好きだったのはこの頃だったかもしれません。

僕のCB-1も我が家へ来てからもう19年も経ちます。いつの間にそんなに経ったのでしょう。フロントフォークには少し錆が出ています。エンジンを掛けようとすると冷却水がパイプの付け根から漏れてきます。だけど一目ぼれしたバイクです。なかなか手放せずいます。きっと手放す気なんてないんだと思います。