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Mazda MPV

Mazda MPV
旅行中の一コマなので、助手席にJomoの毛布(非売品)が乗ってます

MPVがやって来たのは20世紀最後の年、2000年の1月でした。

それまでのある意味ファーストカーだった奥さんの92レビンに乗ってマツダのお店へ行きました。そして新しい愛車MPVとご対面です。実は試乗をしていなかったので、公道を走るのはこの日が初めて。普段はロードスターを足に使っていたので、その広々とした感は驚くほどでした。なによりダッシュボードが広く奥行きがあるので、フロントガラスがやたらと遠くに感じます。ロードスターなどすぐそこにフロントガラスがありましたから。また、室内の幅もビックリするくらい広く、助手席が遠くに感じました。オートマなので発進には気を遣わずに済みます。ディーラーって帰る時、見送ってくれるじゃないですか。あれ結構苦手なんです。特にマニュアル車に乗っている時は緊張します。乗り慣れたクルマですら、「エンストしたらどうしよう」とか「ふかしすぎたらカッコ悪いな」とかいろいろ考えてしまいます。その点オートマはそんなこと考えなくていいから気楽です。

公道に出てみると、思ったほどその車幅は気になりませんでした。メーターもインパネもそんなに派手じゃないので、高級車に乗り換えたとかスポーティーなクルマに乗り換えたとか、そんな時に感じるような感動はありません。とは言え新車ですからそれだけで嬉しくなります。初めてのV6でしたが、なるほど直4に比べればスムーズな気がします。当然おろしたてなのでゆっくりアクセルを踏むからその実力はまだわかりませんでしたけどね。その日は無事家までたどり着くことが出来ました。

さて僕のMPVですが、FFになった2代目の初期型で、前にも書いた通り、黒/グレーのツートンでスポーツパッケージです。オプションはフロアマット、ドアバイザー、CDオートチェンジャー、この3点だけです。そういえば最近はオートチェンジャーってあまり聞かないですね。HDDやメモリナビに直接録音出来るし、iPodやウォークマン、携帯やスマホから音を飛ばしたりするからあまり需要はないんですかね?スポーツパッケージなので、インパネは木目調パネルなどない黒い樹脂そのままですが、元々本木目じゃない木目調パネルってあまり好きじゃないので(なんかかえって安っぽいく感じちゃうんです)特に気になりません。シートはモケットですが、大きくて座り心地もいいです。スポーツカーじゃないのでサポート性は全く期待できませんが、アームレストが結構体を支えてくれるので、特に右折や右コーナーなら結構安定します。クルーズコントロールがないのだけが残念です。Lパッケージなら付いてるんですけどね。それとマイナーチェンジで標準装備になったと記憶していますが、運転席と助手席の間に折りたたみのテーブルがあったと思うんですけど、僕が買った時点ではオプション設定もありませんでした。妹が初代CR-Vに乗っていて、折りたたみテーブルがとても便利だったので、残念です。外見はフロント、サイド、リアアンダー、それにルーフスポイラーとアルミホイール、フォグランプが標準装備でしたので、まあ何もしなくてもそこそこスポーティです。スポーツパッケージだから当然か。タイヤサイズはレビンロードスターCR-Xとも同じ60扁平ですが、前記の3車が185/60R14だったのに対し、215/60R16と、ちょっと太く、大きくなっています。今でこそ市販車でも40扁平が普通に装着されていますが、ちょっと前まで60扁平がスポーティな証でしたよね?標準装備のアルミホイールのデザインはまあ可もなく不可もなくってところですかね。取り立てて高級そうにも見えないし、スポーティでもないですが、掃除もしやすそうだし、まあいいか、ってな感じです。

対向式のワイパーは、個人的には平行式よりいいと思います。拭き残る部分はちょうどルームミラーのあたりだけなので、視界に入る部分はほぼ全面拭けているからです。ただ、大雨の日に最速でワイパーを動かすと、歩道に水しぶきが結構飛んでいたようなので、通学途中の小学生には結構迷惑をかけたんじゃないかと思います。電動スライドドアはまだ設定がありませんでしたが、これはホントに欲しい装備でした。結構お年寄りとかってスライドドアをうまく開けられないんですよね。障子かなにかのようにいきなり横に動かそうとします。いったん手前に引けばすぐに開くのに。親を乗せるときに何度も運転席から降りて助手席側のスライドドアを開けに行ったことか。また、僕のMPVだけかも知れませんが、助手席側のスライドドアが年々滑りが悪くなっていき、結構子供の力だと開けるのが厳しくなってきたんですよね。そんなときも電動なら運転席から開け閉めしてあげられたのに。MPVから次のクルマに乗り換えた理由のひとつがこのドアの開きの悪さですからね。でもスライドドアって前にも書いた通り、狭いところでも前回に出来るとか、子供がいきなり開けても隣のクルマにぶつけるなんてことがないという理由の他に、開けっ放しにしていてもヒンジ式のドアのようにじゃまにならないんですよね。助手席側を全開にして、2列目をベンチシートにしておけば、ステップのところがちょうどいい高さの椅子になります。

前後だけでなく左右にもスライドする2列目シート(僕のころは助手席側だけでしたが、途中から運転席側も左右にスライドするようになったとか)、これはいいアイデアだと思います。3代目MPVや2代目プレサージュのように、ベンチシートにすれば3人乗車可、とはいかず、ベンチにしても乗車人数は変わらずの2人掛けでしたが、ほとんどベンチにしていましたね。その方がシートに荷物を置くときも余裕があるし、アームレストを下ろしてしまえばベンチシートでもキャプテンシートでもほぼ関係ありません。逆にベンチシートにしておけば、助手席側の2列目に乗った人は運転席と助手席の間から前がよく見えますからね。その分常にルームミラーに顔が写るので運転手としてはちょっと邪魔なんです。また、ベンチシートにしておけば、背もたれを倒さなくても、人の前を通らなくても3列目に乗り降り出来るだけのスペースが空きます。キャプテンシート状態だと、2列目に人が乗っているときは、その人の前を通らないと乗り降りできません。そういうこともあってベンチシートにしておくことの方が多かったです。また、2列目は倒すとテーブルになるので、どこかへ行って車内で食事をするなんて時には便利でした。運転席は後ろ向きにはなりませんから、もっぱら3列目に座った人専用のテーブルですね。安全上はあまり勧められないとは思いますが、左右独立して、しかも1列目と同じようにリクライニングできるので、旅行中などに子供が眠ってしまっても、3列目に人が乗っていなければしっかりリクライニングさせてちゃんと寝かせることができるのもいいところです。普通の乗用車だと、後席で寝かせると首が変な角度になっていて心配ですし、助手席に乗せてリクライニングさせると、後席の人は乗りづらいし、何かあったときに外に飛び出してしまう危険性もありますから。2列目なら仮にドルフィン現象が起きても外に飛び出してしまう可能性は低いと思います。まあ本当に安全のことを考えたら動いている間はシートは起こしておくのがベストなんですけどね。3列目はさすがにシートの前後長が短いのと、座面が低いのとでゆったりは出来ませんが、近距離なら大人3人でも実用上問題ありませんでした。惜しむらくは背もたれのリクライニングが3段階くらいしか出来ず、しっくり来る角度がなかったことです。また、2列目シートの形状の都合上、シート下につま先が入る余裕すらなく、2列目を一番後ろに下げていると足元の自由がほとんどありませんでした。それでも一人ならまあまあ楽に座れましたね。さすがはワゴン派生型とはいえLクラスミニバンだけのことはあります。

シートは1列目から3列目まで完全なフルフラットにはなりません。1列目をめいっぱい前に出して、2列目をめいっぱい後ろに下げて、それぞれヘッドレストを外せば1列目と2列めでフルフラットにはなりますが、ほとんどしたことはありません。また2列目をめいっぱい前にスライドして、ヘッドレストを外せば2列目と3列目でフルフラットになります。こっちのフルフラットはよくやりました。何度か家族で車中泊を含んだ旅行に出かけましたが、子供達は後ろをフルフラットにして寝かせました。ただ2列目が一番前まで来ていると、運転席と助手席をあまり下げられず、まためいっぱい倒すことも出来ないので、親は寝心地が悪かったですけどね。

トランクは3列目を格納出来るよう、深さがあったので、3列使っていてもそこそこ荷物が積めました。フルフラットにしてもロードスターより多く荷物が入ったんじゃないかな。3列目シートは初代オデッセイと同じ方式で後ろに90度倒してベンチにもできますし、そのまま収納すると平らな荷室になります。2列目もタンブルさせれば広大な荷室が出来ます。正直フルフラットにするなら2、3列目のシートを畳んで、マットでも敷いて寝た方が平らで寝心地がいいと思います。MPVの場合、あくまで座る時のことを優先しているシートなので、フルフラットにしてもかなりでこぼこしていますからね。出張時、クルマを出すことが多かったのですが、四人なら3列目を畳んでしまえば大型のスーツケースを人数分積んでもまだまだ余裕があります。自転車だってそのまま立てて積むことができます。出先でガソリンを入れたら、オープン記念で福引きをしていて、一等の自転車が当たったことがありますが、普通にそのまま積んで持って来てしまいましたからね。これがセダンや小さなハッチバック車だったらまず持ち帰るのに苦労したことでしょう。それとMPVに乗り換えてから一年も経たないうちに引っ越しをしたのですが、布団やちょっとしたものは全部自分で運んでしまいました。3列目も我が家では親子、孫で出かけることも多かったですし、子供の送り迎えで大勢乗せることも結構あったし、上記の出張時にもべんりだったので、そういう意味では広いMPVの元は十分取ったと思います。

後部座席用に、今じゃきっと当たり前なんでしょうけど、フルエアミックスのエアコンが別に付いていました。3列目運転席側に温度、風量、吹き出し口の切り替えスイッチが付いていました。夏場はともかく、冬場は一人で乗っていても前席用ヒーターと後席用ヒーターをダブルで稼働すると車内が暖まるのも速く、重宝しました。メインスイッチはインパネにありましたからオンオフと風量調整は運転席でも出来ましたが、温度調整や吹き出し口の切り替えは後ろでしか出来ませんでした。せめて温度調整も運転席で出来るとより便利だったでしょう。ただ、エアコンを同時稼働すると燃費にモロに影響します。

コラムシフトは妹のCR-Vと比べると、今ひとつポジションがつかみにくく、特にR、N、Dは一直線なのでわかりにくかったですね。SやLはゲートが切ってあるようなのでまあわかりやすいんですけどね。コラムATだと、昔レンタカーでかりたハイエースのやつはわかりやすかったです。通常のATだとSとか2モードにはボタンを押しながら入れますけど、コラムATはゲートに沿って動かせばいいですからね。あれでコラムATっていいな、って思いました。今ではフロアシフトのATでもゲートが切ってあるものも一般的になって来ましたが、ボタンを押すよりゲート式の方が絶対いいと思います。

フォードベースのV6エンジンは、瞬発力はありませんでしたが、回せばそこそこ速く走れましたし、クルマの正確にはあっていたと思います。ちょっとオイルが減っていても、オイル交換をサボってもエンジンが不調になったことは一度もありませんでした。さすがアメ車のエンジン!ただし、そのせいか燃費の悪さもアメ車並!!カタログ燃費でも確かリッター8キロくらいだったと思いますが、エアコンを多用する夏と、暖機運転が長めになる冬は大体リッター5キロってとこでしたね。春と秋でもリッター6キロくらい。走行距離が300キロを越えたらガソリンを入れないと不安でした。幸いレギュラー仕様なので、ほんの少しだけ助かりましたが、それでもガソリン代は結構バカにならないものがあります。何年か前のガソリンが高騰した時は、伊豆で満タンにしたら1万円を超えたこともありますからね。とにかくMPV唯一にして最大の欠点は燃費でした。

1800ミリを越える車幅とは言っても、それでどうにも困ったことなどほとんどありませんでしたね。まあ多少道を選ぶことはありましたが、普通に乗れます。今では1800ミリを越えるクルマも結構ありますが、よっぽど狭い道を通らないと家から出られないようなところに住んでいるんでもなければまず問題ありませんね。MPVって車格の割には安いせいか、結構女性も乗ってますからね。

MPVとは12年、約12万5千キロの付き合いでした。その間に、上でも書いた通り引っ越しもしたし、車中泊をしながらの旅行やキャンプへも行ったし、何でもないときに庭でフルフラットにして昼寝もしたし、とにかくただ走っているだけで楽しいというクルマではありませんでしたが、クルマに乗ってどこかへ行こう、何かをしようという気にさせてくれるクルマでした。子供達はMPVとの別れをとても残念がっていました。特に下の子にしてみれば、生まれたときからあったクルマですから。とにかく思い出がたくさんあるのでしょう。走る機能に関してはまだまだ問題なかったのですが、車体には年式相応のヤレが出ていましたし、ドアの動きが悪いのもずっと治りませんでしたし、タイヤも4本とも溝がなく、タイヤを交換して車検を通してまだ乗るかどうか悩んだ末、今替えないと子供達にお金がかかるようになって、代替えなど出来なくなるだろうということもあり、乗り換えを決意しました。次のクルマの納車がMPVの車検が切れるのに間に合わないので、一足先に代車と交換する形で別れました。次のクルマを受け取りにディーラーへ行ったところ、まだ敷地の隅に置かれていましたが、この日が僕のMPVを見た最後です。12万キロを走ったMPVですから、恐らく廃車になったんだと思います。「まだ走れるのにね」子供達がそう言っていたのが印象に残っています。