Tom's Toy Boxsince 2008

購入以前(その2)

さて、そんな電算劣等生の僕でしたが、「コンピュータ」という機械に全く拒絶反応を示してい訳でもありませんでした。出来上がったソフトがコンピュータ上で動くことに対しては、純粋に「凄い」と思っていました。

当時、僕が通っていた大学では一般の学生でコンピュータを自宅に保有している者はほとんどいませんでした。ワープロ専用機ですら同じです。卒業論文を含め、研究論文もほとんどの学生は原稿用紙に手書きで仕上げていました。タイプライターを使ったことがあるという学生はたまにいましたが、そもそも英語で論文を書き上げる学生などうちの大学にはいません。

そんな中、よくつるんでいた友だちがNECのPC-8800シリーズ(型番はわかりません)を購入しました。

さっそくそのPCを見に、友人宅を訪れました。友人は「ゲームソフトを一緒に買ったから」と、そのソフトを取り出しました。そのソフトのメディアは、どう見てもカセットテープにしか見えません。

「ソフトってカセットみたいだな。どこに入れるの?」

僕は素朴な疑問を友人にぶつけました。友人は何も言わず、おもむろにそのメディアをPCのそばにあったラジカセ(モノラル)に入れました。「えっ?」僕は素で驚きました。ソフトをラジカセに入れて何をしようっていうのでしょう。僕はPCを見に来たのであって、音楽を聴きに来た訳ではありません。

友人は「これでプログラムをPCに読み込ませるんだよ」と説明してくれました。当時、PCのソフトがどのように流通しているのか僕は知りませんでしたが、まさかソフトをラジカセにいれてロードするなど、夢にも思っていませんでした。「15分位かかるからちょっと待ってて」

そりゃそうでしょう。だってラジカセで普通に再生しているんですから。イヤホンジャックから伸びた線はPCに繋がっているようでした。「ロードには結構時間がかかるんだ。しかも途中でロードエラーがよくよく起きるから、一発でロードできるとは思うなよ」

今時のPCしか知らない人から見たら、ビックリでしょう。でもこれが普通だったようです。結局その日も途中で何度もロードエラーを起こし、待ちきれない僕が「ロードエラーになったらプログラム動かせないの?待ってらんないよ」と文句を言うと、「じゃあ動かしてみるか?」と、中途半端にロードしたプログラムを起動しました。そこには(今思えば、ディスプレイは普通の14型テレビだったような気が・・・)洋物のRPGのタイトル画面が!

「なんだよ、動くじゃん」。しかし、次の画面に進むと、そこには中途半端に輪郭だけの画面が現れました。どうやらSFアドベンチャーゲームらしいのですが、変な宇宙人が岩に座っている画像が、中途半端に輪郭だけで描かれていました。「えっ、ここまで?」「そう、ここまで」

結局その友人のPC画面で見たのはその画像が最初で最後となりました。