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Zippo

以前「煙草」のページにも写真を載せましたが、僕は基本的にはライターはZippoを愛用しています。もちろんそれだけではありません。例えば長期で海外出張に行く場合、ライターのオイルは持ち込み禁止なので、そういう時は途中でオイル切れを起こす可能性があるZippoには留守番してもらい、普通の100円ライターを持っていきますし、いわゆるターボライターもZippo以上に風に強いので、そちらを使うこともあります。マッチの火が消えたあとの匂いも好きです。だけど基本はZippoです。オイルの匂いが煙草に移るとの理由でZippoを嫌うシーンが西風の「Last Moment」という漫画にありますが、僕にはそこまで煙草の香りが分かるわけでもなく、そこまでのこだわりはありませんし、逆にあのオイルの匂いも好きです。奥さんもZippoのフタを開ける音で僕がどこにいるかを感知するようです。

僕のZippoとの最初の出会いは、25年以上前になります。当時近所の雑貨屋で買い物をすると、「ブルーチップ」という切手のようなものを、購入金額に応じた枚数貰うことができました。それを台紙(小冊子)に貼って集めます。集まった冊数によって、いろいろな商品と交換することができました。今でいうポイントシステムの走りのようなものです。「ブルーチップ」は協賛しているいろいろなお店で貰うことができました。その「ブルーチップ」と交換で貰ったのが最初のZippoです。主に学生の頃使っていたのですが、いつの間にかどこかへしまい無くしてしまったようです(写真が残っていないのが残念です)。

その後、日常使い用にいくつか、またコレクションにいくつか購入しましたが、一番長く使っているのが「煙草」のページに写真を掲載したWindyです。実はこのWindy、僕にとっては二代目です。初代はアンティークブラスのケースにWindyがエッチングされていたものです。結構使い込んでいい感じになっていたのですが、知人に譲ってしまい、その代わりに購入したのが二代目Windyです。また、Windyと平行してスタンダードモデルの230を使っていました。230はヒンジ部のピンが破損し、ケースとフタが泣き別れ状態となってしまいました。また、Windyはインサイドユニットの板バネが破損し、フタがぶらぶらと閉まらない状態でした。今はニコイチ状態です。

ブログにも書きましたが、このニコイチWindyの紛失騒動があり、またWindyもヒンジ部のピンがかなりくたびれてきていて、いつ破損してもおかしくない状態なので、今回、普段使い用に1500円の、それでもれっきとしたZippoを購入し、使い始めました。これを機に、Windy230を修理に出そうかと思っています。

それからもうひとつ、普段使いではないのですが、結婚式などに出席する時持ち出すZippoがあります。スリムサイズのZippoです。これ、実は父の形見です。

形見のZippo(表) 形見のZippo(裏)
あんまりうまい写真じゃないけど、これが形見のZippoです

僕の父も愛煙家でした。昔はエコーばかり吸っていましたが、いつからかセブンスターに銘柄が替わっていて、エコーはきつくて吸えない僕でしたが、セブンスターになってからは、煙草が切れるとよく父が買い置きしておいたものをこっそり失敬したりしました。いつも(本人は気づいていませんでしたが)世話になっていたので、ある年の誕生日にスリムサイズのZippoとオイルとフリントをセットで父にプレゼントしました。普段はカートン買いでもらえる百円ライターを愛用している父でしたが、まんざらでもないようで、持ち歩いて使ってくれているようでした。

そんなある日、確か「どこで買ったんだ?」というようなことを聞かれました。あまりはっきりとは覚えていませんが、確かプレゼントしてから一ヶ月位しか経っていなかった頃だったような気がします。なんでそんなこと聞くのかなぁ、と思いましたが、普通に購入した店を教えました。その後、特に変わったこともなかったので、そんなことがあったことすらすっかり忘れていました。

それからまたしばらくした頃、僕に向かって父がおもむろに「ライターやるか?」と言ってきました。

???

なぜ父がライターをくれる?何でそんな話になるのか、僕にはさっぱり分かりませんでした。「なんで?」僕が問い詰めると、父はその理由を話してくれました。

僕の父はパチンコすらやらないくらいのギャンブル嫌いでした。また色弱だったらしく運転免許証も取らなかったのでクルマも運転しませんでした。酒は好きでしたが元々さほど強くないこともありますが、外で飲むと正体不明になるまで酔いつぶれてしまうため、家でサントリーレッドを飲む位でした。そんな訳で趣味らしい趣味も持たなかったのですが、唯一の趣味は生き物を飼うことで、田舎だったこともあり、最盛期には犬(数匹)、小鳥(十姉妹や文鳥など)、金魚や熱帯魚(大型の魚はいませんでしたがピラニアを飼っていたこともあります)、それに金鶏、銀鶏、シャモといった鶏系。アヒルなど三羽から増え、一時期は百羽近くまで増えたこともあります。とにかくいろいろな生き物を飼って、その世話で休日は一日終わってしまうのでした。生き物の世話の関係で、子どもの頃は泊りがけでの旅行など行ったことがありません。せいぜい母の実家へ一泊で行く位です。当然父は行きません。そんな父がある日生き物の世話をしている時にZippoをどこかに落としてしまったそうです。心当たりは探したものの見つからず、発覚を恐れ同じものを買ってきたのだそうです。しかも今度はなくさないようにほとんど使わずしまっておいたのですが、後日落としたZippoを見つけたため、新しく買った方を僕にくれるというのです。

僕はその話を聞いて、ちょっと嬉しかったのを覚えています。父は結構短気で、小さい頃は怖いイメージしかなかったのですが、僕も大人になり、そんなに怖いという印象は薄れていました。だけど昼間は無口で、あまり僕に本音を語らない父だったので、実はそんな裏工作をしてまで自分のミスを子どもに悟られまいとしていたなんて。別に無くしてしまったのならそれはそれでしょうがない、怒ったりなんかしないのに。僕はありがたくそのZippoを貰いました。普段使いのZippoはあるので、貰ったZippoはしまっておきました。

父に肺がんが見つかったのは僕が結婚して2年目の冬のことです。がんであることは告知されたものの、先生からは「一緒に治しましょう」と言われ、大好きだった煙草も止め、治療に専念していましたが、先生から家族に、もう長くないことが伝えられ、僕は父に告知してもらうことを選択しました。残りの人生を悔いなく過ごしてもらいたかったからです。翌日僕ら家族同席の下、父に再度告知されました。父は治してもらえると思っていただけに、相当ショックを受けたようです。僕が帰った後(当時僕ら夫婦は実家から離れて暮らしていました)、あれほど我慢していた煙草を母に買いに行かせ、吸ったようです。そして翌日、父は帰らぬ人となりました。僕は告知してもらったことがよかったのかどうか、今でも考える時があります。

父の葬式に、普段使いのZippoでは場違いかと思い(今思えば、なんでたかがライターなのに場違いなんて思ったのか)、父から貰ったZippoを使ったような気がします。それ以来、フォーマルな場には父から貰ったZippoを持って行くようにしています。

最後は暗い話になってしまいましたね。

今後、僕のZippoコレクションを紹介して行こうと思っています。そんなに数はありませんが、どうぞご期待下さい。